
シリコーンは、その優れた特性により多くの産業分野で広く使用されています(ベネフィットと用途)。 特に、その安全性に対する評価を得て、食品添加物、食品用器具類、化粧品、医薬器具等への使用も必要な認可を得て、幅広く応用されています。
これまでの多くの科学的研究結果に基づき、シリコーンは意図した用途に使用される限り、ヒト健康と環境に対して安全であると我々は確信しています。
シリコーン工業会は、ヒト健康、野生生物や自然環境の保護を優先します。シリコーン工業会は、今後も継続的にシリコーン製品の環境・安全性を検証し、その結果を規制当局と共有します。
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ジメチルポリシロキサン |
シリコーン製品の中で、最も長い間、また最も大量に生産、使用されてきた代表的なポリジメチルシロキサン(粘度10cSt以上)の環境・安全性について説明します。
ポリジメチルシロキサンは、安全性の見地からの検討や試験が世界中で豊富に行われてきました。たとえばポリジメチルシロキサンのLD50値は、他の化学物質と比較して大きな数字であり、急性毒性が極めて低いことを示しています。さらに様々な角度からの安全性評価が行われてきており、総合的に安全性の高い物質であることが確認されています。
環境に排出される少量のポリジメチルシロキサンの大部分は、活性汚泥の廃棄により、土壌環境に堆積します。ポリジメチルシロキサン環境濃度を陸生生物、水生生物について測定された無影響濃度と比較すると、ポリジメチルシロキサンは環境に対する悪影響を及ぼすとは予想されません。
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環状シロキサン |
環状シロキサンとは?
環状シロキサンとは、ケイ素原子上に2つのメチル基を持つケイ素原子(Si)が酸素(O)原子と結合したジメチルシロキサン単位 (CH3)2Si-O-を有する環状構造をもったシロキサンで、シリコーン製品の製造原料として使われています。中でも環状シロキサンとして一般的なものがD4、D5およびD6です。
以下にこれらの特性、用途および安全性について説明します。
D4
D4として一般的に知られているオクタメチルシクロテトラシロキサンは、ジメチルシロキサン単位 (CH3)2Si-O-を4つ有する環状構造をもったシロキサンです。
D4は、無色透明の液体で、シリコーンゴム、シリコーンゲル、シリコーンオイルなどを製造する中間体として主に使用されます。
製造されたD4の大部分はシリコーンメーカーにて中間体として消費されます。その一部はシリコーンメーカーから顧客へ出荷され、他の有機材料をシロキサンで変性するための工業原料として使用されます。
D4の「健康と環境」に関するより詳細な情報については
http://www.cyclosiloxanes.org/D4_health_environment_properties
をご覧ください。
D5
D5として一般的に知られているデカメチルシクロペンタシロキサンは、ジメチルシロキサン単位 (CH3)2Si-O-を5つ有する環状構造をもったシロキサンです。
D5は、無色透明の液体で、シリコーンゴム、シリコーンゲル、シリコーンオイルなどを製造する中間体として主に使用されます。
製造されたD5はシリコーンメーカーにて中間体として消費され、一部はスキンクリームやデオドラントなどの化粧品の原料成分として使われます。それが配合された化粧品には「シクロメチコン」または「シクロペンタシロキサン」と成分表示されています。
D5はパークロロエチレン代替としてドライクリーニング溶媒としても使用され、労働者、消費者および環境に対するパークロロエチレンへの暴露削減に寄与しています。
D5の「健康と環境」に関するより詳細な情報については
http://www.cyclosiloxanes.org/D5_health_environment_properties
をご覧ください。
D6
D6として一般的に知られているドデカメチルシクロヘキサシロキサンは、ジメチルシロキサン単位 (CH3)2Si-O-を6つ有する環状構造をもったシロキサンです。
D6は、無色透明の液体で、シリコーンゴム、シリコーンゲル、シリコーンオイルなどを製造する中間体として主に使用されます。
製造されたD6はシリコーンメーカーにて中間体として消費され、一部はスキンクリームやデオドラントなどの化粧品の原料成分として使われます。それが配合された化粧品には「シクロメチコン」または「シクロヘキサシロキサン」と成分表示されています。
D6の「健康と環境」に関するより詳細な情報については
http://www.cyclosiloxanes.org/D6_health_environment_properties
をご覧ください。
物理化学性質
D4、D5、D6は無色透明の液体です。以下にそれらの主要な物理化学性質を示します。

D4、D5、D6は水への溶解度が低く、高いヘンリー定数を持ちます。このことはD4、D5、D6が容易に大気中に揮発することを意味します。
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環境中でのシロキサン |
シリコーンは様々な製品に利用され、現代生活の質の向上、安全性の向上、省エネルギーなどに役立っています。しかし、これらの利点も環境を犠牲にして成立つのでは意味がありません。
環境中で検出されるシロキサンとして、主にD4、D5、D6などの揮発性シロキサン(VMS)および揮発性の低いシロキサン(PDMS)があります。
以下の図は、水、堆積物、土壌、および大気中でのこれらシロキサンがどのように挙動するかをまとめたものです。詳細については以下の図のそれぞれの場所をクリックしてください。


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環状シロキサンについての資料 |
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環状シロキサンの日本および諸外国における安全性評価について |
化学物質の安全性評価や管理は、その使用により生じる人の健康及び環境への影響の低減を目的として行われています。昨今では、化学物質そのものの有害性(ハザード)に加え、環境中での排出量や人や生物が化学物質にさらされる暴露を勘案した「リスクベース」の管理が国際的な潮流となりつつあります。これは、有害性のある化学物質はすべて管理が必要との考え方から、有害性のあるものであったとしても、その化学物質にどの程度さらされるかを判断したうえで管理すべきとの考え方へと潮流が変化していることを示しています。
日本における化学物質の安全性評価は、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下、化審法)に基づき、「生分解性」、「蓄積性」及び「毒性」の3つの項目により行われています1。各化学物質は、これらの項目による安全性評価の結果を踏まえ、厚生労働省、経済産業省及び環境省の関係審議会において、専門的知見に基づく審査を受けます。その結果、化審法上の各分類に振り分けられ、規制対象とされた化学物質について、製造、輸入、使用等に関する必要な規制が課されることになります。
各国における化学物質の安全性評価及び管理の実施状況は様々ですが、カナダやオーストラリアでは既に実環境をベースにしたリスク評価を実施しており、米国においても環境モニタリングデータを用いたリスク評価を実施しています。他方、EUではハザードベースの規制や予防原則の考え方が強く、それに基づいた安全性の評価が実施される傾向が見られます。
【 コラム:安全性評価におけるリスクベースとハザードベースとは? 】
生分解性
定義:自然環境の中での分解されやすさの程度、またはその性質のこと。分解されやすい化学物質は「良分解性」、分解され難い化学物質は「難分解性」に分類される。 |
生分解度試験:
分解の程度を調べるために行われる試験を生分解性試験と言い、その方法は経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development:OECD)により、試験法ガイドライン(以下、OECDテストガイドライン2)として定められている。 | |||||||
日本では、化審法の省令3により301C等(微生物による分解度試験)を用いることが定められている。
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蓄積性6
定義:環境中のあらゆる暴露経路(すなわち、空気、水、底質/土壌および食物) (図1参照)を通じて生物の体内へ取り込まれた化学物質の体内での蓄積しやすさ。えらなど周囲の水と直接接触する部位から体内へ取り込まれた水中の化学物質が体内に蓄積することを生物濃縮という。生物濃縮性のある化学物質は、生態系の食物連鎖を経て体内に濃縮され、高次捕食動物(図2参照)ほど体内における濃縮度が高くなる。
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生物濃縮度試験:
蓄積性の程度を調べるための試験を濃縮度試験と言い、その方法はOECDテストガイドラインとして定められている7。 | |||||
日本では、化学物質の最終的な排出先が水系8(特に海)である場合が多いことから、化審法の省令9により魚を用いた濃縮度試験を用いることが定められている。
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【 コラム:蓄積性判定に用いられる試験方法とその問題点 】
毒性
定義:人や動植物に対して有害な作用を及ぼす性質のこと。 |
毒性試験:
人や動植物に対する継続的な暴露の結果として有害な作用を及ぼすかを調べるために行われる試験を毒性試験と言い、その方法はOECDテストガイドライン11として定められている。 | |
日本では、化審法の省令12により、原則として被験物質の曝露経路に基づいた試験を用いることが定められている。個々の試験として、細菌を用いる復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験又はマウスリンフォーマTK試験、28日間反復投与毒性試験、90日間反復投与毒性試験又は哺乳類を用いる反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験、生態毒性試験(藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験、魚類急性毒性試験)が採用されている13。 |
諸外国における環状シロキサン(D4、D5及びD6)に関する安全性評価
環状シロキサンの安全性評価は、日本、カナダ、オーストラリア、米国、EUにおいて実施されています。各国における評価結果(2020年4月時点)は以下のとおりです。1.日本
2017年12月22日に開催された経済産業省、厚生労働省及び環境省の合同審議会14において、揮発性環状メチルシロキサン(D4、D5及びD6)の審査が化審法に基づき行われました。各物質に対する評価は以下のとおりです。
D4:上記審議会における評価・判定にあたり、鳥類繁殖毒性に関する評価データが不足していたため、監視化学物質に指定されました。しかし、人健康への懸念はないことから、第一種特定化学物質には該当しないと判定されました。なお、監視化学物質への指定は、化審法上、難分解性及び高蓄積性を有し、かつ、環境に対する有害性である環境毒性が明らかでない化学物質について有害性評価のために監視の対象とすることを意味しており、その使用が制限される訳ではありません。
D5:上記審議会の評価・判定の際に求められる全ての有害性評価データが揃っていたことから、それらデータに基づいて評価が実施された結果、一般化学物質に分類されました。
D6:上記審議会における評価・判定にあたり、人健康および生態への影響に関するデータが不足していたことから、監視化学物質に指定されました。D4と同様、監視化学物質への指定によりその使用が制限される訳ではありません。
2.カナダ
2009年、カナダ環境省がD4、D5及びD6についてハザードをベースとしたスクリーニング基準に基づいて規制評価の最優先化学物質に定め、スクリーニング評価を実施しました。その結果、D4及びD5 が有害物質候補リストに掲載されることになりました。(D6については、スクリーニング評価の結果、環境に影響を与え得る量を人が摂取することはないと結論付けられました。)
これに対し、北米シリコーン工業会Silicones Environmental, Health and Safety Council of North America (以下、SEHSC)の要請を受けたカナダ環境省は専門家を招集しました。それらの専門家で構成するBoard of Reviewがサイエンスベースの検証及び有害性評価を実施した結果、D4については、事業者に対する排水モニタリングが課せられることになりました。
また、D5については、「現在及び将来にわたって人及び環境に対するリスクが少ない」との結論となり、2014年に同有害物質候補リストから除外されました。
カナダ環境省による安全性評価の結果については、以下のリンクをご参照ください。
D5:http://ec.gc.ca/lcpe-cepa/default.asp?lang=En&n=515887B7-1&offset=3&toc=show
D6:https://www.canada.ca/en/health-canada/services/chemical-substances/challenge/batch-2/d6.html
3.オーストラリア
2018年、オーストラリア環境エネルギー省は、D4、D5及びD6の人健康及び環境への影響に対するリスク評価を実施し、その結果、これら化学物質のリスクは小さいと判断し、いずれの使用についても制限を設けないことが決定されました。
オーストラリア環境エネルギー省による安全性評価の結果については、以下のリンクをご参照ください。
4.米国
2012年、米国環境保護庁(Environmental Protection Agency: EPA)は、D4とD5を環境評価の対象に取り上げることを米国の化学物質規制である有害物質規制法(Toxic Substances Control Act: TSCA)に基づき決定しました。これを受け、米国に拠点を持つシリコーン関連企業が有するデータをEPAとSEHSCがともに検討し、米国においてはD4のみをリスク評価の対象とすることが決定されました。その後、D4の環境リスク評価を科学的に実施するために、SEHSCとして、2018年までの3年間、環境モニタリングによりデータを収集し、最終報告書をEPAに提出しました。またSEHSCはD4の安全性評価を進めるため、TSCAに定められた製造者によるリスク評価を実施する制度を利用し、2020年2月、リスク評価実施のリクエストをEPAに提出し、受理されました。
なお、SEHSCが独自に専門家に依頼したリスク評価では、D4は人健康・環境への悪影響は認められないと結論づけられています。
5.EU
EUでは、人の健康・環境の保護、欧州における化学産業の保護及び競争力向上などを目標として、2007年6月、化学物質の登録・評価・認可及び制限に関するREACH規則が定めらました。このREACH規則に則り、物質の評価が実施され、その結果、リスクがあると判断される物質に対する規制が検討・実施されています。
含有する化学物質が洗い流され、排水に直接流れることが想定されているパーソナルケア用途の「Wash-off製品」については、環境、とりわけ水系への排出低減を目的とした規制の導入が進められており、このためD4及びD5についても製品中の濃度を0.1%未満とする規制が2020年2月1日より施行されました 。
また、2020年3月には、肌や頭髪などに塗布したままの状態での使用が想定されている「Leave-on製品」のD4、D5及びD6の濃度及び、「Wash-off製品」に用いられるD6の濃度についても、全体重量の0.1%未満に抑えるとのECHAによる提案があり、2020年3月にECHAの社会経済分析委員会(Socio-Economic Analysis Committee: SEAC)においてこの提案が採択されました 。なお、パーソナルケア用途のD4及びD5への規制に関しては制定後5年間の猶予期間を設けることが提案されています。これを受けて、Wash-off製品中のD6並びにLeave-on製品中のD4、D5及びD6に対する使用規制について、ECHAは2021年春に欧州委員会に提案し、欧州員会の判断を仰ぐことになる見通しです。
【 コラム:EUにおける安全性評価の基準 】
【 コラム:ウェイトオブエビデンス(Weight of Evidence) 】
1新規化学物質の判定及び監視化学物質への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準
2Testing of chemicals http://www.oecd.org/env/ehs/testing/
3新規化学物質に係る試験並びに優先評価化学物質及び監視化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める省令 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=422M60001500003_20180401_430M60001500004
4水中の好気性微生物による、増殖、呼吸、有機物の分解作用によって消費される酸素量(Biochemical oxygen demand:BOD)
5新規化学物質の判定及び監視化学物質への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準 https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/information/ra/criteria_180413.pdf
新規化学物質等に係る試験の方法について<微生物等による化学物質の分解度試験> https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/laws/laws_r01070153_0.pdf
6化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律【逐条解説】p.38-39 https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/laws/laws_exposition.pdf
7Testing of chemicals http://www.oecd.org/env/ehs/testing/
8化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律【逐条解説】P.38 https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/laws/laws_exposition.pdf
9新規化学物質に係る試験並びに優先評価化学物質及び監視化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める省令 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=422M60001500003_20180401_430M60001500004
10新規化学物質の判定及び監視化学物質への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準 https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/information/ra/criteria_180413.pdf
新規化学物質等に係る試験の方法について<微生物等による化学物質の分解度試験> https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/laws/laws_r01070153_0.pdf
11Testing of chemicals http://www.oecd.org/env/ehs/testing/
12新規化学物質に係る試験並びに優先評価化学物質及び監視化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める省令 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=422M60001500003_20180401_430M60001500004
13新規化学物質の判定及び監視化学物質への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準 https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/information/ra/criteria_180413.pdf
14平成29年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会化学物質調査会、化学物質審議会第173回審査部会、第180回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会
15REGULATION (EC) No 1223/2009 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL https://ec.europa.eu/health/sites/health/files/endocrine_disruptors/docs/cosmetic_1223_2009_regulation_en.pdf
16ECHA's committees conclude on five restrictions https://echa.europa.eu/-/echa-s-committees-conclude-on-five-restrictions
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D4及びエポキシシランのPRTR制度 対象化学物質への指定について(2020年5月8日) |
今般、経済産業省、環境省、厚生労働省3省合同 による化管法 物質選定小委員会において、以下の化合物が化管法上の第一種指定化学物質に該当するとの提案が行われ、審議の結果、原案のとおり決定されました。
(1) 2-{[3-(トリメトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキシラン
(物質選定グループP132、CAS RN.2530-83-8(TMSPGE)、以下「エポキシシラン」と略す)
(2) オクタメチルシクロテトラシロキサン
(物質選定グループP41、CAS. 556-67-2、以下「D4」と略す)
シリコーン工業会(SIAJ)は、D4及びエポキシシランが化管法における第一種指定化学物質の要件を満たすとは言えないと考えています。このため、これらの化学物質が第一種指定化学物質に該当するとの提案に対し、3月13日、添付のとおり意見書を提出しました。
今回の化管法物質選定小委員会の決定に私どもの意見が反映されなかったことは誠に遺憾ですが、これらの化学物質の第一種指定化学物質への指定により求められる対応を適切に行っていくとともに、正式な施行に伴い必要となる情報をご案内してまいります。また、当局及び関連審議会に対しては、D4及びエポキシシランの人及び環境への影響や曝露に関する科学的な根拠に基づくデータの提供を通じて、これらの化学物質のリスクが低いことをご理解いただけるよう努力を継続してまいります。
化管法における第一種指定化学物質候補案の選定に関するパブコメ提出意見(2020年3月13日)
D4及びエポキシシランの化管法における第一種指定化学物質への指定に関するFAQ
Q | A | ||||||||||
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なぜD4及びエポキシシランは第一種指定化学物質になったのですか? |
化管法は、「人の健康を損なうおそれや動植物の生息などに支障を及ぼすおそれ」があり、「物理的化学的性状や製造、輸入、使用などの状況などからみて、相当広範な地域の環境において継続して存在すると認められる化学物質」を第一種指定化学物質と定めています。 2019年4月に開催された経済産業省、環境省、厚生労働省3省合同による化管法物質選定小委員会において、D4及びエポキシシランは、それぞれ以下の理由により第一種指定化学物質として指定されることになりました。
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D4及びエポキシシランは人や生態系に対して有害なのですか? |
SIAJは、それぞれ以下の理由から、これらの化学物質の人や生態系への有害性は小さく、また、その用途に照らせば暴露可能性も低いことから、いずれの物質も化管法における第一種指定化学物質の要件を満たすものではないと考えています。
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この決定に対してSIAJはどのような対応を政府に行いましたか? パブコメを提出しましたか? またその内容はどのようですか? |
SIAJは、D4及びエポキシシランのいずれも化管法が定める第一種指定化学物質の要件を満たすとは言えないと考えており、2020年2月の経済産業省、環境省、厚生労働省3省合同による化管法選定小委員会における決定に対し、3月13日、パブリックコメントを提出しました。SIAJによるコメントの詳細はこちらからご覧いただけます。 今回の化管法物質選定小委員会の決定に私どもの意見が反映されなかったことは誠に遺憾ですが、これらの化学物質の第一種指定化学物質への指定により求められる対応を適切に行っていくとともに、正式な施行に伴い必要となる情報をご案内してまいります。また、当局及び関連審議会に対しては、D4及びエポキシシランの人及び環境への影響や曝露に関する科学的な根拠に基づくデータの提供を通じて、これらの化学物質のリスクが低いことをご理解いただけるよう努力を継続してまいります。既に安全性評価を実施済みの諸外国の事例も参考に、化学物質の安全管理が適切な形で実施されることを切望します。 | ||||||||||
今後どのようなステップを経て決定されるのですか?そのタイミングはいつ頃ですか? | 今回の経済産業省、環境省、厚生労働省3省合同による化管法物質選定小委員会での審議を受けて、新型コロナウイルスの収束状況次第ではありあますが通常の手続きであれば年内に官報に掲載・開示されます。2020年5月の時点では詳細なスケジュールは示されておりません。 | ||||||||||
D4及びエポキシシランはいつ頃から化管法対応が必要になりますか? | 2020年5月の時点では未定ですが、通常告示後1年以上の準備期間が設けられます。 | ||||||||||
D4及びエポキシシランが第一種指定化学物質に指定されたことを受けて、シリコーン製品を購入した場合どのような対応が必要になりますか? |
第一種指定化学物質を1質量%以上含有する場合、安全データシート(Safety Data Sheet:SDS)の提供義務とラベル表示の努力義務が課せられており、年間取扱量が事業所単位で1t以上の場合には排出量・移動量の把握と国への届出が必要となります。なお、譲受・購入した時点で1%以上含有している製品を1%未満に希釈してから用いられる場合も取扱量の把握が必要です。 詳細は経済産業省のウェブサイト 「PRTR制度 対象化学物質」及び「化学物質排出把握管理促進法の基本事項に関するQ&A」をご参照ください。 | ||||||||||
シリコーン製品中に存在するD4やエポキシシランも規制対象となるのですか? | 化管法では、添加物や不純物として扱われる場合であっても、有害性があると判断された化学物質は規制の対象となります。 | ||||||||||
D4及びエポキシシランの排出量はどのような方法で求めますか? |
算出方法には、①既存のデータを用いた推定によるものと、②実際の環境中での測定データに基づくものの2つがあります。
各化学物質の算出方法に関する詳細は、当該物質のSDSや経済産業省作成の「PRTR排出量等算出マニュアル」を、また、最終製品中のD4含有量の測定方法については、欧州シリコーン工業会のウェブサイトに掲載の情報をご参照ください。 | ||||||||||
D4の主な用途を教えてください。 | 主にポリマー原料をメインとする工業用中間体として使用されており、世界的に見てもこの用途が99%以上を占めています。 | ||||||||||
エポキシシランの主な用途を教えてください。 |
主に、一般工業用中間体として用いられています。具体的には、接着剤、シーラント、カプセル材料及びコーティング剤等に少量配合しておくことにより被着体との接着機能を発揮する目的で用いられる、シランカップリング剤として使用されています。 | ||||||||||
化管法(化学物質排出把握管理促進法)/PRTR制度とはどのような法律ですか?何を目的に作られた法律ですか? |
化管法は、有害性のある化学物質の環境への排出量を把握することなどを通じ、化学物質を取り扱う事業者による自主的な管理の改善を促進し、環境保全上の支障を未然に防止することを目的として、1999年に制定されました。 また、PRTR制度とは、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれのある化学物質が事業所から環境(大気、水、土壌)へ排出される量及び廃棄物に含まれて事業所外へ移動する量を、事業者が自ら把握し国に届け出し、国は届出データや推計に基づき排出量・移動量を集計・公表する制度で、2001年から実施されています。 詳細は経済産業省のウェブサイト 「化学物質排出把握管理促進法の基本事項に関するQ&A(法律の目的と効果)」及び「PRTR制度」をご参照ください。 | ||||||||||
化管法対象化学物質とはどのような化学物質ですか? |
人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれ(オゾン層破壊性を含む)があり、相当広範な地域の環境に継続して存在する(暴露可能性がある)と認められれば、化管法による規制対象の化学物質となります。暴露可能性に応じて「第一種指定化学物質」、「第二種指定化学物質」の2つに分類され、このうち「第一種指定化学物質」について、PRTR制度の対象として、化学物質管理指針の制定とPRTRの届出、SDSの提供が求められます。 詳細は経済産業省のウェブサイト 「化学物質排出把握管理促進法の基本事項に関するQ&A(本法の対象化学物質選定の考え方)」 及び 「PRTR制度 対象化学物質」 をご参照ください。 | ||||||||||
第一種指定化学物質とはどのような化学物質ですか?そしてどのような規制があるのですか? |
次のいずれかの有害性の条件に当てはまり、かつ環境中に広く継続的に存在すると認められる化学物質です。 - 人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれがある - 自然の状況で化学変化をおこし容易に有害な化学物質を生成する - オゾン層破壊のおそれがある 第一種指定化学物質に選定されると、化学物質管理指針の制定とPRTRの届出、SDSの提供が求められます。現在「第一種指定化学物質」に指定されている化学物質はこちらからご確認いただけます。 詳細は経済産業省ウェブサイト 「化学物質排出把握管理促進法の基本事項に関するQ&A(本法の対象化学物質選定の考え方)」 をご参照ください。 | ||||||||||
PRTRの対象となる業種はどのような考え方で決められるのですか? |
これまでのPRTRパイロット事業や化学物質の使用実態調査から得られたデータ等を踏まえ、第一種指定化学物質を環境中に排出すると見込まれる業種を、届出義務による事業者の負担も勘案して政令で定めています。現在24業種が定められています。 詳細は経済産業省のウェブサイト 「化学物質排出把握管理促進法の基本事項に関するQ&A(PRTRの対象業種の選定の考え方)」、または環境省のウェブサイト 「PRTR対象事業者の要件について」をご参照ください。 | ||||||||||
排出量の届出の際、用途や使用方法によって区別する必要があるのですか? | 化管法では、製品の用途による除外規定はありません。 | ||||||||||
輸出目的の指定化学物質も化管法の対象となるのですか? |
輸出を目的とする化学物質については、化管法に基づくSDSの提供義務及びラベル表示の努力義務は課されていません。輸出先国の関連法規に従ってください。 また、輸送(陸上、海上、航空)に関しても化管法の適用はありませんので、運送業者に化管法に基づくSDSの提供義務及びラベル表示の努力義務は課されていません。
詳細は経済産業省のウェブサイト 「化学物質排出把握管理促進法の基本事項に関するQ&A(海外のSDS制度について)及び(運送業者に輸送を委託する場合)」をご参照ください。 | ||||||||||
報告などを行わず化管法に違反した場合はどのような罰則があるのですか? |
第一種指定化学物質等取扱事業者としての要件を満たしているにもかかわらず、排出量等の届出を行わなかったり、虚偽の届出を行ったりした場合、また、SDSに関する報告徴収に従わなかったり、虚偽の報告を行ったりした場合に罰則が適用されます。 詳細は経済産業省のウェブサイト 「化学物質排出把握管理促進法の基本事項に関するQ&A(罰則の適用)」をご参照ください。 | ||||||||||
どの様な事業者に化管法に基づいた排出量の報告義務があるのですか。 |
届出対象事業者とは、第一種指定化学物質を製造、使用その他業として取り扱う等により、事業活動に伴い当該化学物質を環境に排出すると見込まれる事業者であり、具体的には以下の1から3の要件すべてに該当する事業者です。
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SDSの成分表に1%未満の第一種指定化学物質が表記されています。この場合、報告義務はありますか? その第一種指定化学物質が年間1トンを超えた場合、排出量の報告義務はありますか? |
第一種指定化学物質が1質量%未満の場合は報告の対象外となります。 また、第一種指定化学物質が年間1トンを超えた場合でも、取り扱う製品(原材料、資材等)中の第一種指定化学物質の含有率が1質量%未満であれば届出の必要はありません。 詳細は経済産業省ウェブサイト 「PRTRに関するQ&A(PRTR排出等算出マニュアル)(取り扱う製品中の対象物質の含有率が1質量%未満の場合)」をご参照ください。 | ||||||||||
事業者より提出された排出量データはどのように公開されますか? 事業者の事業所単位で公開されますか? |
事業者から届出された化学物質の排出量・移動量に関するデータは、環境大臣及び経済産業大臣によってファイルに記録され、化管法第8条第4項に基づき集計・公表されます。また、届出された個別事業所の排出量等のデータは、経済産業省のウェブサイト「PRTR制度に基づく届出データの公表について」にて公開されています。 | ||||||||||
事業者の排出量削減の義務はありますか? | 事業者に削減義務はありません。ただし、「指定化学物質等取扱事業者が講ずべき第一種指定化学物質等及び第二種指定化学物質等の管理に係る措置に関する指針」では、事業者が化学物質の管理計画を策定し、その計画に基づき「指定化学物質の大気、水及び土壌への排出の抑制に努める」こととしています。 |
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健康・安全に対する試み |
グローバルで活動する私どもシリコーンメーカーにとって野生生物や自然環境を保護することは重要な責務です。私たちは工業会として過去35年以上にわたり労働者、消費者、環境および製造プロセスに関わるシリコーンの安全性を評価するための科学的研究を行っています。
具体的には、コンピュータモデリング、実験室試験、環境モニタリングおよび最新の科学的手法を用いたシロキサンの科学的研究やリスク評価を行っています。これらの研究データを日本や海外の規制当局に共有しています。
このような活動を通じ、本来の目的用途に使用される限りにおいて、私どもが提供する製品は安全であると確信しています。
環状シロキサンに関連する研究や有用なリンクについては、「新着情報」セクション
http://www.cyclosiloxanes.org/news_studies_cyclosiloxanes_D4_D5_D6
にアクセスするか、D4とD5のよくある質問
http://www.cyclosiloxanes.org/links/23/38/FAQ-D4-D5-Europe-North-America-and-Japan
をご覧ください。
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環状シロキサンの環境モニタリングとリスク評価 |
揮発性環状シロキサン類(cVMS)は、シャンプー、化粧品等の製品に広く一般的に使用されています。
揮発性が高く環境中に揮散しやすく、大気中では二酸化珪素、二酸化炭素、水に分解します。また、水への溶解度は非常に低く水環境中には殆んど存在しないと考えられている一方、土壌中では難分解性が確認されており、その経年変化及び生態への影響が懸念されていますが、日本国内では環境水中の揮発性環状シロキサン類(cVMS)を研究した論文はまだ少なく、日本におけるその存在状況についての知見は十分とは言えません。
家庭から生活排水と共に排出された揮発性環状シロキサン類は、その多くが下水処理施設で除去されますが、一部は河川に排出され、海へ流入し、最終的に海底の堆積物中に蓄積すると考えられます。SIAJでは環状シロキサン類のうちD4、D5、D6の3物質を調査対象とし、人口密集地を流れる多摩川と、その流入先である東京湾を選んで環境モニタリング調査を行っています。
8年間にわたる東京湾のモニタリング調査の結果では、海底の堆積物中の揮発性環状シロキサン類の濃度は横ばいか減少傾向であり、かつ濃度が低いため、環境へのリスクは少ないと考えられます。
環状シロキサンの環境モニタリングとリスク評価(詳細) |
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工程安全ガイドライン |
他の多くの製品と同様に、最終製品を製造するために使用するシリコーン中間体も、その製造作業、保管、輸送などにつき、安全を確保するため適切に取り扱う必要があります。
下記のシリコーン原料につき、シリコーン工業会が提供する安全ガイドラインを理解頂き、適切に取り扱い下さる様お願いします。
クロロシラン類(日本語) (English) | |
SiH含有シロキサン類(日本語) (English) |
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エアゾール用途に関する推奨 |